秋の裏庭/小川 葉
 
 
 
ひさしぶりに
裏庭を見ていた

貝殻や
魚の死骸が
たくさん漂着していた

いつのまに
海が来ていたのだろう
命はまだ
こんなにも
満ちているのに

干潮の砂浜を
どこまでも歩くと
遠くから潮騒が聞こえる
そうしていつだって
迎えに来ようとしていたのだ
海は

貝殻と
魚の死骸を片付ける
ひとつひとつが
今ここにある
命だとするならば
夏の終わりの一日が
そこにもあったのだろう

妻と息子をを抱きしめると
むかし家族と
海水浴の帰りに食べた
熟れた西瓜の匂いがする
裏庭からは
秋の虫の声が聞こえる
 
 
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