発覚〜hack and eat〜/伊月りさ
熟のような区分があるのだとしたら。醒めたことが悔やまれるほど幸福な夢が、舌の上で蕩けて甘く香って笑みをもたらすのだとしたら。こわい夢は美味しくない、きっと、口に含んだ途端に胃袋が痙攣して泣きながら嘔吐する。
わたしはいやな食べ物なのだ。
しかし今、獏はひるまない。
口まわりをべたべたにして、記憶の化合物を食らう。
食らっています、幼い戦慄を、食らっています、繰り返す恐怖を。
これはつまり、かれらにとって肝心なのはその夢がわたしから離れ、ただ純然たる
夢であることなのでしょうか。
臆病なきみは
食われるわたしに
安心してその目を閉じて
眠れぬわたしは
きみの廃屋
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