病床この身染み付かす前に
背中の真ん中が痒い
死ぬる意思の粘土捏ねる爪は伸び
軋んだのは階段か
並ぶ麦畑どうすればその色になる
夜のしじまに手紙を書いた 表を見たら母宛だった
あじさいが花火 絵心はなく
扇風機にも首を横に振られ
川辺で遊ぶ子どもらの声欲し
縁側も風鈴もない夏
挨拶を躊躇して天気は良い
空の青 海の青 板ばさみ青二才
御霊宿る檜触れて語らず
虫の声枯るる臓腑の水洗い
えんえんと続く畦道えんえんと続く
剪断せし枝先に蕾があって
梳く妻の髪拾いし
種飛ばしたら西瓜畑になるねと叔父の手 花菖蒲