水に添う 二/一ノ瀬 要
 
 
 
病床この身染み付かす前に


背中の真ん中が痒い


死ぬる意思の粘土捏ねる爪は伸び


軋んだのは階段か


並ぶ麦畑どうすればその色になる


夜のしじまに手紙を書いた 表を見たら母宛だった





あじさいが花火 絵心はなく


扇風機にも首を横に振られ


川辺で遊ぶ子どもらの声欲し


縁側も風鈴もない夏


挨拶を躊躇して天気は良い


空の青 海の青 板ばさみ青二才





御霊宿る檜触れて語らず


虫の声枯るる臓腑の水洗い


えんえんと続く畦道えんえんと続く


剪断せし枝先に蕾があって


梳く妻の髪拾いし


種飛ばしたら西瓜畑になるねと叔父の手 花菖蒲
 


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