失われた水泳部員/北村 守通
 
Mは

もう名前すら忘れてしまった

突然消えてしまった


彼の為のコースがぽっかりと空いた
選手登録表が
一つ埋められなくなった
仕事が増えた


マリファナをやっていると
本人は話していたが
それが本当のことなのかどうかを
知る術はなかった
お互いに必要な距離というものを知っていた
ただ
電話の音が鳴り止まなくなる

こぼしていた
いつまでも頭の中で鳴り響くんだそうだ


Mのコースも
揺らぎ続けていた
埋まることはなかった
その必要はなかったし
埋めるに必要な人員もいなかった
ただ
一日の仕上げの
ダッシュのサイクルがはやく
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