失われた水泳部員/北村 守通
Mは
もう名前すら忘れてしまった
突然消えてしまった
彼の為のコースがぽっかりと空いた
選手登録表が
一つ埋められなくなった
仕事が増えた
マリファナをやっていると
本人は話していたが
それが本当のことなのかどうかを
知る術はなかった
お互いに必要な距離というものを知っていた
ただ
電話の音が鳴り止まなくなる
と
こぼしていた
いつまでも頭の中で鳴り響くんだそうだ
Mのコースも
揺らぎ続けていた
埋まることはなかった
その必要はなかったし
埋めるに必要な人員もいなかった
ただ
一日の仕上げの
ダッシュのサイクルがはやく
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)