風はしる/北村香織
 


 ふと思い出す両手の田園
 
 空は青く 低く
 風にふかれた若い稲は
 順々にそよとなびく

 少女は
 わずかに震え
 指を組んで 目を閉じ
 神様に感謝、
 と 言った

 私はいたたまれなくなり
 思わず遠くに目をそらした
 高架に車が走っていた

 だが風は
 私の行けない所まで
 舞い上がる

 あれはたしかに
 少女が呼んだのだ


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