円環のひと/恋月 ぴの
 
袋を腰に回し、ママ!、ママァ!と叫んでいた

わたしだけをみてみてってところだよね

木陰ではお母さんが手馴れた様子で我が娘の局部を摘むと
つるんとした割れ目から虹でも架けるような勢いでお小水が飛んだ

私もあんな感じで母におしっこさせてもらっていたのかなぁ

子育てって誰かに押し付けられた義務なわけでもなさそうだし
なんなんだろうね

独り身の気楽さがやっぱ私は好きなんだと
意地っ張りな赤とんぼになったつもりで夏の記憶に手を振った




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