Explicit Circumstance/瀬崎 虎彦
 
窓の外に火星が出ている 部屋の中にグロキシニア
手のひらにひやりとする不在と堆積する夜 闇夜
少女のいない部屋で道具にぐるり囲まれ
憧れに取り残されてシャツを濡らす惨めな男

目に見えるものがすべてではないが
少女の目はもはや光を宿さないという
これから共有する長い時間を
闇に縫い付けられてしまったその世界

あなたに見せたいものがこんなにある
一つ失われた感性にむかって
どれだけわたしは声をおくり続けられるか

わたしの描くものをもうあなたに見せられない
あなたがいなければ誰がわたしの作品を
見てくれるというのだろう 分からない
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