交信/小川 葉
 
 
 
姿がないほうが
生きている気がして
その声さえ失い
わたしは言葉になって
あなたを待っている

言葉を読む
あなたにはきっと
姿があるだろう
形を維持したまま
温度を上げて

言葉しかない
わたしを前にして
知らない過去も
知らない未来も
あなただけが変わらない

姿のない
命でもない
日々交換される
意識だけがある
言葉だけが
知っている
言葉を生まなければ
生きていけない

待合室で
順番を待つ
わたしの名が呼ばれ
交信が終わると
その意識もなくなって
あなたの言葉が
わたしではないどこかで
またはじまっている
 
 
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