「名」馬列伝(8) ローズバド/角田寿星
 
彼女の母親の大ファンだった。
ひと昔前の古めかしいヨーロッパ血統、シンプルな馬名、華奢な馬体。
それでいて直線では鋭い末脚で突っ込んできては、強いライバルたちに引けを取らなかった。
善戦まではいくがあと一、二歩届かないところも胸を締め付けられた。

その娘が母譲りの、いや母を上回る末脚を武器に、さらなるドラマを演じることになる。

桜花賞TR、フィリーズレビュー。最後の直線で、ロバみたいに小っこいのが大外からすっ飛んできて差し切った。青毛の馬体はさながら、しずかに突き進む瀟洒な軽自動車のようだった。豪脚や鬼脚とはかけ離れた、それこそ母を思い出すような、切れ味抜群でありながら、どこか儚
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