ゴロワーズの煙/熊野とろろ
一日が昨日の焼き増しでやりきれない
陽射しが薄いカーテンをくぐり抜け
ブラウン管の画面に撥ねる
ちくちくしたいらいらをぐるぐる
誰に噛みつくわけもなく
さして何になるわけもなく
街の中に飛び出したくて
仕方なくなるのはだいたい夜中で
原因は仲間と飲み明かした夜の
街の灯りが映画のようだったとか
バーボンのゴツい氷が
鍵盤を転がすように融けたとか
すべてが相俟って音楽だったとか
厚塗りを重ねた夜が忘れられないからだろう
ところで 本日の夕暮れの空は
青く澄み切っていて涼しげ
大の字に寝転がって
フランス製のタバコを吸った
雑念めまぐるしい一日
でも 音のない一日
煙はすぐに青に溶け込んだ
何処へ行く
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