指輪/
灯兎
から先にいい恋ができる。
だから、前に進んでほしい。そんな君が好きだったんだ」
いつからか覚えた作り笑いで、そんな言葉を紡ぐ。こんな僕だからこそ彼女は惹かれ
たんだろうなと、薄ら寒く思う。
「うん、こっちこそありがとう。最後に言えて、嬉しかったよ。じゃ、さよなら」
そう言って、雪のように消えていった彼女に、憐みと懺悔を一さじずつ混ぜて、呟く。
「最後まで、ありがとう」
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