ある戦争体験者と話をしながら/北村 守通
わりの空間が裂かれ、それがじりじりと自分に向けてせばめられていくことの恐怖のほうが強いだろう。あるいは遠くのそれを打ち抜くことはゲームにおいて生き残り、破壊し終わったあとの充実感に近いものがあるのかもしれない。
それは鹿や熊を撃つことよりも簡単なことであり、尚且つ、食うためのものを撃つ場合と違って獲物を解体するといったわずらわしさからも無縁のことである。
戦場での武勇伝を語るとき、彼の顔はとても輝いていた。
しかし、銃を用いず、という話になったとき、彼の顔はとたんに曇った。
本質的に同じ行為のはずなのに、であった。
私はそれ以上彼に戦場のことを聞くのはやめることにした。
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