ゲーテ生誕260周年/瀬崎 虎彦
 
その人の詩
遠い外国語の
耳慣れぬ響きと
一通の手紙の文面

進化し続けることは
数多くのものを淘汰し
個体は自分自身の経験で
宇宙を語りなおすばかりだ

いつしか循環する日水辺にて
ヨハン・ヴォルフガングは悼む
ひとの死と植物の死と動物の死を

懐かしい韻律で世界に返す定型詩の
それはまだ真っ暗闇だったころの空で
メフィストフェレスが静かに口ずさむ唄
戻る   Point(6)