レモネエド・ジンジヤアエエルのある風景/仲本いすら
 
きんとひえた。
レモネエド・ジンジヤアエエルのある。(在る)
ブルマステイフみたいな男が、それを出したとき、そのほんの数秒のあいま。
グラスからは、へその緒のようなにおい、がして
くらり、くらりと、しながら。したから。
僕はひとくちもそれに口をつけずに。
レモネエド・ジンジヤアエエルのある。(在る)
そのカフエを出る。でてから。

その、追いかけてくる、

はじまりのにおいから、

にげる。にげるように。

アメ横の魚屋のすきまを、

にげる。にげるように。

棒つきのメロンや、パイナツプルが、
ふらふらと、ただようのは、この場所にきっと
重力がないからだ
[次のページ]
戻る   Point(1)