レモネエド・ジンジヤアエエルのある風景/仲本いすら
きんとひえた。
レモネエド・ジンジヤアエエルのある。(在る)
ブルマステイフみたいな男が、それを出したとき、そのほんの数秒のあいま。
グラスからは、へその緒のようなにおい、がして
くらり、くらりと、しながら。したから。
僕はひとくちもそれに口をつけずに。
レモネエド・ジンジヤアエエルのある。(在る)
そのカフエを出る。でてから。
その、追いかけてくる、
はじまりのにおいから、
にげる。にげるように。
アメ横の魚屋のすきまを、
にげる。にげるように。
棒つきのメロンや、パイナツプルが、
ふらふらと、ただようのは、この場所にきっと
重力がないからだ
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