帰還/
西天 龍
車窓に悪態をつく
相変わらず灯りも少なく
溢れ出る水蒸気に煙る
陰鬱な故郷
まだ話はついていないと
背中で悪態をつく街を尻目に
「とりあえず帰る」と
戻ってきたけれど
駅から続く道をみあげたら
空が割れて笑われた
「手に余って戻ってきたのか
蛇蠍のごとく嫌った故郷に」
叩く扉の向こうにいる
母と友と
幼なかった頃の自分に言えるのは
「ただいま」なのだろうか
「まだ話はついていない」と
詰問する母や友や故郷に
「ただいま」と
言えるのだろうか
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