そいつは海じゃない/角田寿星
めく鳩の群れだ
ぼくはちがう ほら気付いてほしい
翼の尖端の色あいがグラデーションで
ちょっと痙攣的だろ
だからぼくは胸まで浸かって葬式する
においに敏感な日本人は
枯れてしまった花の残骸を放っとかないから
気をつけろ
そいつは海じゃないかもしれない
だいたい夕焼けなんてほんとに存在すんのか
あかあかと染まるてめえの面影だと?
じょーだんは顔だけにしてくんねーかなあ
いつも弱っちくウスぼんやりしてくばっかで
あれじゃまるで少しずつ死んでくみてえだ
なになに 夕焼けこそがあれは原初の死で
所在なげな恣意的先入観のいわばわれわれは
貸衣裳にホンローチートイのハタ
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