オレンジ/あ。
 
剥いたばかりのオレンジの皮には
世界中の切なさが詰め込まれている



予期せず飛び込んでくる酸味はほろ苦く
容赦なしにやわらかいところを襲い
細胞のわずかなすき間からもぐりこんで
きゅうっときつく締め上げる



目印もないのに歩き回り
気付けば見慣れたスタート地点
間違えないようにと旗を立て
進みなおしたって結局同じ



迷子のうさぎは亀に負けてしまいましたとさ
口の中で呟いてくだらなさに笑ってしまう
歩くのだって得意でもないのに
どうしていつまで歩いてるんだろう


毒づいてじたばたしてるのに
もうちょっとで答えが見えてきそうで
放り投
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