人生の大半は君を待つことに費やされた/瀬崎 虎彦
 
いつしか雪が降りだして
夏なのにね おかしいね
僕は悲しい顔をして
君が帰ってくるのを待っている

僕のほうが先に死んでしまうよ
犬だものね 当然だね
玄関のタイルの冷たさに
柔らかく眼を閉じて待っている

歩き眠り 食べ眠り
けれど僕の人生の大半は
君を待つことに費やされた

待ちくたびれたけれど
最後に伝えたいことは一つ
君を待つ日々は幸せだったと
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