帰路/山中 烏流
 




自転車を転がして
きみの帰る坂道を
すれ違っていく

街灯の影が頬を寄せて
わたしの帰路を
こっそりと示したけれど

すぐには帰る気になれずに
坂道の終わりで立ち止まった

そんな夜



いつか聞いた話は
いつか聞いた話、として
どうしても
処理されてしまう

例えばそれが
どんなに大切なことでも
その結果は変わらないし
変えることもできない


だから
蝉の声が
ただの音であることも
通り過ぎた様々は
二度と、戻らないことも
もう
理解はしているというのに

その認識を
思うように変えられないのと同じく

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