京さん −荒川通り3丁目ー/リーフレイン
京さんは今年七十四だ。
京さんのおとっつあんとおかっさんはほんとの親じゃあなかった。
京さんが産まれる前の話、おとっつあんとおかっさんに女の子が生まれたそうだ。おとっつあんは大喜びで汽車乗って、いそいで東京まで雛人形を買いに行ったそうだ。帰ってきたら、赤んぼうは死んどった。最初の子だしするしで、ふたありとも、悲しんだことは悲しんだんだけんど、次があるさとも思ったそうだ。二年経って、今度は男の子。おとっつあんはほんまに飛び上がって喜んで、やっぱし汽車乗って東京へ鯉のぼりを買いに行った。かえってきたらやっぱし死んどった。ほんでもって産婆さんに、もう子供は作っちゃあなんねえと引導も渡された。母体がも
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