夏休み/ゆりあ
 
たかったけど
私はもちろん泣かなかったし
女の子は下を向いて携帯電話を退屈そうにいじっていた

私はこれで最後にしようと思ってたけどやめて流行りの曲を歌った
終わると「やっぱ〇〇歌うまーい」
と女の子は言ってマスカラとつけまつげで黒くなった目をぱちくりさせながら言ってくれた

本当は私のあんな歌でも誉めてくれる女の子たちが大好き

多分これでいいんだ、と思った

さっきの曲は
去年生意気で瞳の色素の薄い男の子に教えてもらった曲
彼の影響で大好きになった
私は彼の細くて長い指がすきだった
よくその指で攻めてもらった
今頃彼はどこで何してるんだろ

薄暗くて狭い部屋の中には香水の甘い匂いでいっぱいで吐き気がした
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