思いデパート/みぞるる
 
自動ドアから
ドヒューゥッ
と押し寄せてくる冷気に
斬新に感動する触覚がきもちいい

ドアが自動に開くすばらしさを
あたしはもはや忘れている



「あぁ
 あの小規模デパートに
 はよ行きたいわぁ」

携帯越しでそう言ったきみに
あたしの脳みそは置いてけぼりで

“きみにとっては”
思い出のデパート3階にある本屋で
今日もあたしは受験参考書を手に持ったのです



今年のゴールデンウィークも
例年通り黄金ではなかった

しかし手帳を開いても
何をしていたのかさえ
検討がつかないのは異例だ

(2年前のGWは
 ゾウリムシの可愛さについて
 デパート4階の図書館突き当たりにて
 確かに談笑した)


そして今日も
思い出になりきらならないデパート1階で
コムサ デ モード
の白黒に埋もれてゆくのは

あたしだけ
あたしだけ

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