孕む、風を、未来を/望月 ゆき
ぼくたちの未来は いつも、さよならで終わっていくの?
地球儀をまわしすぎたせいで
透きとおっていたものが
濁っていく
あの日、
チョークで描いた線路が滲んで
二十世紀はもう どこかに消えてしまった
ぼくたちはいつも、くりかえし
動物から産まれる
まだ見えない眼で
乳房をさがした、あの夏に
細く、戦争は閉じられた
乳房には無数の川がながれ、乳腺はおだやかに
ひらかれつづける
人知れず、夜の葉かげで
羽化したばかりの蝉を 標本にする
ぼくたちの、そのやさしさを 誰かが
罪と名づける
名づけたがることの罪の重さを
知らないま
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