愛鍵/小川 葉
土曜の朝から
日曜の夕方まで仕事をして
家に帰ると
妻と息子が家の前で
途方に暮れて立っていた
買い物に行こうとして
鍵をかけて抜いていたら
鍵が折れてしまったのだと言う
しかたがないので
僕らは隣のおばあちゃんに
鍵屋さんを呼んでもらい
また三人でしばらく途方に暮れていた
仕事、大丈夫なの?
妻が尋ねる
大丈夫なのかは
僕が決めることではないさ
とこたえると
悔しそうな顔をして
妻は何も言わなかった
合鍵
と僕は言った
眠すぎてそれ以上言葉にできなかったけど
妻は
うん、とうなづいて
すべてわかっているようだった
息子が折
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