三叉路/瀬崎 虎彦
 
季節の出口にたたずむと
誰もいない停留所から
後悔と不安が手に手を取って
去っていくのが見えた

水の流れに耳澄まし
緑濃い田舎道を歩く
ぼくの足元には先ほどからずっと
記憶の残滓残照

微笑晴天に目を挙ぐ三叉路で
優雅に戯れる寄る辺なき未来
掌でずっと汗ばんでいく声と声たち

見透かされたように感じて足を止める
かつて道祖神と呼ばれたなにものかが
象徴体系から解放されて石に変わっている
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