身体の海【1/6】身体の海の中を漂って/A道化
<ときにわたしはそんな身体の海の中を漂って、…>
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鷲田清一著『悲鳴をあげる身体』を、数週間前に読み終えた。その中の言葉に、引きつけられる。
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著者である鷲田先生の講義を受けたことがある。とぎれとぎれではあったが、まだ大学に比較的通っていたころのこと。もう何年も前の話だ。学科は違ったけれども、同じ文学部の教授だった先生の講義を、真ん中よりも後ろの席に座ってボンヤリと聞いていた。ノートも何も恐らく残っていない。角の無いお顔・表情・話し方、つるりと剥げた頭、そして丸縁の眼鏡。柔かなひとだった。何についての講義だったか忘れたが、<共感覚>、という
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