闇/伊那 果
 
 わたしよくわかっているの
 わたしなんでもわかってるの
 いろんなことが
 夏の影でうまれなかったせみのこととか
 木から落ちた熊のこととか

 いろんなことをわたし知ってるの
 だからあなたのこともわかるわ
 あなたは残らない
 わたしの世にはいない

 黒猫が
 笑っていたよ
 さっき

 あれは何の乾杯だった?

 そうしてさみしいわたしは
 いろんな世界を見ているの
 幸せそうな日常の底の
 不幸せを探しているの
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