悲しいときのふたり/みぞるる
 
洗面台の鏡に映る、少し鼻の歪んだ女の顔には
そう簡単に幸福という言葉を見出せない
蛍光灯を反射する瞳の光が淀んでいた

蛇口をひねるのは好きだった

恐らく、
水が出てくることが確かに約束されているからだ
いつかの冬、水道管が凍結してしまい
いくら蛇口をひねってもキュッキュッという空しい音をたてるだけのことがあった

私はひどくつまらなかった

思い通りにならないことが退屈と感じるだなんて
そんな人間はこのだだっ広い世の中でただ息をするのみだ
何ものにも触れられない

私は曖昧なこの面に
勢いよく流れ出る冷水をぶっかけてやった
(綺麗になるわけでもないのに)
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