全天の踊り子/伊月りさ
長雨は
母の辛抱
わたしの鏡に降り続く
快晴は
彼の信頼
わたしの鏡を照りつける
そしてうつくしい反射が生まれ
記号化していた言動が
漲(みなぎ)るダンス・ステップになる
踊るわたしはあなたを感じる
路地の植込みも跳ね起きて
向き合う他人が頷くリズム
この光が滴るすべてに
張りつめた二の腕の冷たさを感じる
刻々と熱を奪われて
氷結と溶解を同時に感じる
ただ流れるようにわたしは踊る
水溜まりに
踏み込んだ踵
そこから歪んでいくのだ、という
警鐘もゆっくりと押し沈め
切れ味のよい細い糸を
足首に絡めたままに
曇り空の深奥から
女
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