「月の砂と背凭れ」/Leaf
 
りが微睡んだ窓辺の方角を向いていた
立ち去りぬそれらは躊躇無く
夜通し窓をこつっこつっと訪ねてきた
それはプレパラートが割れた撥音に酷似していた




混濁した薄紫色に蒼白な感情が手にとるように乱れる其れは
受動と能動の狭間に我を忘れ、窓際に耳を添い気を濁した
そして、窓硝子の嗄れた声に背を削がれるよう、途方にくれた





何処からか誰かが囁いた

 “漕いで、漕いでよ鞦韆(ブランコ)
      放(ほう)った夜光の線上を辿り
          月の砂を握り締めるのです”と





或いは、此処は遮断よりは真空の部屋
乗じて、我は無軌道よりは自堕落な背凭れ
揺れてはならない筈の旗より遅れて放つ波動は
本当は揺れていたのか、それとも揺らされていたのか




対価のない風薫る背凭れが翻っては嗤う真空を揺するんだ
代償を予感さす其れが何かはルナーフェイズに訊いてくれ
敢えなくさらさら零れ落ちたら小さなその手で掬ってくれ


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