蟻/快晴
 
公園の芝生に腰を下ろして
君と他愛も無い話をしていると
右手の甲にそうっと蟻が這い上がる
私は無表情にその蟻を一瞥し
左手の親指の腹で静かに潰す

目の前には無限のような緑
足下は歩き慣れた茶色い土
そこに突如現れた肌色の山
なんとなくその山を上ると
『急に陰が覆って…』
蟻の意識はぷつりと切れた

小さい頃は蟻などを殺しては
私も遊んだものだった
蟻の巣を土で塞いだり
餌を必死に巣に運ぼうとするのを
棒きれなんかで妨害したり

『あともう少し…。あともう少し…。』
そこで目的にほんの少し手が届かない
(あぁ、人間社会と一緒ではないか!?)
「ねぇ、ちゃんと聞いてるの?」
と、そこで不意に君の声

私の意識は突如、現実に引き戻されて
無性に右手の甲がむず痒くなる

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