よちぼ/小川 葉
よちよち歩きの頃から
そう呼んでくれた
近所の酒屋の父さんが
亡くなった
いつか帰省した時に
店にタバコを買いに行くと
タバコよりもたくさんの
缶ビールをくれながら
帰ってきてだが
よちぼ
おがったな
よちぼ
酒飲むようになったべな
よちぼ
わらしの時とひとじだな
と言うたびに
よちぼよちぼと缶ビールを
一本また一本と
持ちきれないほどくれるので
もういいですよと笑うと
その細い目を
もっと細くして父さんは
生まれて間もない
赤子を見るような目で
僕を見て
笑ってばかりいるのだった
仙台で暮らしてることを話すと
むか
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