真夜中の給水/
 
真夏の真夜中
のどがとても渇いて
焼けるように熱くて
這うように起き上がった

冷たくてきれいな水が飲みたくて
水道のじゃ口をひねって
両手を丸めてすくってみたの

それでも私
うまく水をすくえなかった
手のひらに
たくさんの水を受け止めたのに
たくさんの水がこぼれてしまった

結局口元には何度やっても
一口も運べなくて
ぼおうっとしているうちに
水をじゃーじゃー 流してしまった

その時 ふうっと あの人の表情
思い出してしまった
頭によぎってしまった
あの悲しそうな目・・・
心臓がばくばくして二つにちぎれそう

いつのまにか頬が涙だらけになって
べたべたになった
仕方ないからびしょびしょの両手で
顔を拭った

水はつめたく、やさしかった
そしてやわらかく涙をふいて、
今日をなかったことしてくれた
全部なかったことにしてくれた

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