伝わる/志賀羽音
 
 咲いた菜の花をむしり採って、
 夕暮れに鳴く蜩を踏み潰して、
 熟れた枇杷を投げ捨てて、
 白い地面を蹴飛ばしました。

「毎年、四回やって来る電報は、全て、破り捨てました。」

――破り捨てた後に、私の中の感覚は死んで、また戻ります。





 あめの甘さに喉を潤したのは、暖かな匂いを感じたからです。
 上手くいかない事に腹を立てたのは、眩しいビルディングを見たからです。
 自分の愚かさに涙を流したのは、色付いた木々を撫でたからです。
 楽しかった時間が戻らないのは、冷たさが抱き締めるからです。

「いつでも、どこでもやってくるメールは、全て、読みました。」

――読んだ後に、私の中の感情が弾け飛んで、その中の一つは私に降りかかります。





(そして、電報を破り捨てたことを、メールを読んだことを、私は、深く、後悔をしました。)
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