『光蘚〜ヒカリゴケ』/Leaf
伝わる霧雨のビブラート〜〜〜鬱蒼と連なる光蘚の抱擁
ぬくいな
ぬくいね
―――ほろほろ、ほろほろ、の伝導
何処かしこ
彼方此方至るところに鎮座する
ちいさなヒカリゴケの精霊が
放射と反射の格子を合間縫い
我我を囲おうとする
森浴に塗れる鮮烈なる欲動は
―――――いつしか滅ぶ肉体の土への回帰
天から滴り落ちる澄んだ雫が瞼を掠める
―――――その一滴一滴に込められた想い
疲れたろ
疲れたな
―――ぽつ、ぽつ、の伝心
細く萎みゆく洞窟の先は霞みて
互いの皺枯れた手を握り締め
一歩一歩円みを増して
確実に歩んでいく
ふたつの丸い背を優しく包む
ヒカリゴケが
ふたりの覚束ない足元を
いつまでも
いつまでも
照らしていた
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