輪郭/木屋 亞万
女は死してなお美しくありたかった
最も耐えられなかったのが遺体発見現場の女を縁取る白い輪郭だった
そんなまぬけな標識のようなシルエットで、女の身体を縁取るということは
死んだ女にとって許しがたい屈辱だった
女はすぐに恋人の夢枕に立ち、
白熊の着ぐるみを幼児が描いたようなのっぺりとした輪郭で
自分の最期の姿が描かれていることに不満をこぼした
女の恋人は現場に赴き、その縁取りの乱雑さに愕然とした
縄跳びの紐で彼が人間をかたどったとしても、
もう少し身体のラインを再現できただろう
男は白いチョークを用いて女の死体を再現していくことにした
彼が最後に見た彼女の肢体を元に
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