水のない水槽/
三原千尋
水のない水槽の中で
ただじっと空を見ていた
泳ぎ方を忘れた魚たちには
青の区別がつかない
水のない水槽の中は
水がない分だけ騒がしい
自分の鱗のはげ落ちる音にすら
耳を塞ぎたくなるほどに
積み重なった鱗を踏んだ
ぱりぱりと乾いた音がした
死んだ鱗は誰も傷付けない
水のない水槽の中で
見捨てた青を探してる
水のない水槽の中で
重なる鱗に溺れる
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