ありふれた痛み/
月山一天
強気になって
世を吸い込む。
どんな詩人も書きえぬ悲しみを
歳老いた8月に
ひたすら閉じ込めて。
別室で寝る夫婦。
話す事を忘れた兄。
母を知らない父。
家を無くした姉。
我が子を怖がる母。
世を。
この世を浸す隠れた悲しみ。
溢れすぎて、
見落された痛み。
普通すぎて、
ニュースにもならない。
身近な事程
気づこうとしない私に
弱気になって
また
この世を吸い込む。
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