夏のヴェランダから/瑠王
なんだか懐かしい晴れ間 太陽のもとなのに水の中のような
切り落とした断崖から現れたのは夏だった
緑は黄色く笑い 雲は水の空にとけてゆく
遠くで見ている陽炎が意識を惹きつける
誰かの窓で震えた
日光が時々私の目を驚かせる
隣接したヴェランダ 赤い炎の女性
(呼んでる気がする)
(君を?)
(違う、私が)
(何を?)
(私を)
(なら呼んでみるといいよ、君も)
焦躁の火も悲境の火も
みんな雨を待っている
リズムの支配を逃れて 蝉が輪唱する
遠のいたり近づいたりして そこにいたのはやっぱり夏だった
(比較的 彩度の強い まだ新しい)
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)