夏のヴェランダから/瑠王
 
なんだか懐かしい晴れ間 太陽のもとなのに水の中のような
切り落とした断崖から現れたのは夏だった
緑は黄色く笑い 雲は水の空にとけてゆく
遠くで見ている陽炎が意識を惹きつける

  誰かの窓で震えた
  日光が時々私の目を驚かせる

隣接したヴェランダ 赤い炎の女性
(呼んでる気がする)
(君を?)
(違う、私が)
(何を?)
(私を)
(なら呼んでみるといいよ、君も)

  焦躁の火も悲境の火も 
  みんな雨を待っている

リズムの支配を逃れて 蝉が輪唱する
遠のいたり近づいたりして そこにいたのはやっぱり夏だった
(比較的 彩度の強い まだ新しい)

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