ドア、閉まります/吉田ぐんじょう
 

夜の間
やわらかく曲がりくねって
遠いお伽の国へと繋がっていたレールは
朝の光を浴びた時にはもう
冷たく固まって
駅と駅とを繋ぐ
当り前の鉄の路へと戻っている
包装紙から出したての
きゃらめるのような形の電車には
几帳面な女子たちが折り紙で
きちっと折ったような
白いワイシャツを着たひとたちが
絶望したような顔で
どこかへ運ばれてゆく

みんな完全に
起きているわけではないので
車内にいるひとたちのなかには
昨夜夢で見たのだろう
おそろしい怪物をつれているひともあるし
理想の女の子にひざまくらをしてもらって
うっとりと眼を閉じているひともある


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