ムササビとマタタビ/木屋 亞万
 
「ムササビはセックスした後の精子が固まって栓として膣を塞ぐらしい。次のオスがセックスするときはコルクみたいなペニスでその栓を引っこ抜くのだそうだ。人間の精子もそんな風になっていたら、浮気とか離婚とかがもっと減っていたかもしれない」
 男はジョッキを片手に持ったまま、そんな話を私にしてきた。
「それから猫はマタタビの匂いを嗅ぐだけで恍惚状態に浸れるそうだ。マタタビの臭いを嗅いだり、舐めたり、かじったりするだけで性的興奮が得られるのだそうだ。マタタビを嗅いで欲望を処理できていたら人間はもっと幸せだったかもしれない」
 男はジョッキに半分ほど残っていたビールを飲み干して、さらに続けた。
「それに
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