蝉としゃれこうべの朝/A道化
 



目を開けなくとも蝉が鳴いている
目を開けなくともあなたの部屋にわたしがいる
けれど、目を開けて
眠るこの部屋のあなたを確かめる


蝉が蝉が鳴いている、ああ、夏なのだ
翅の摩擦熱が夏に加わって、灼熱、だ
その中、蝉の蝉の轟音に圧されて
しん
と眠るあなたに、ふと、しゃれこうべを見る


蝉と夏が濃く濃く高くなるにつれ
しゃれこうべはカルシウムを白く枯らせて、しん、と眠る
その歯の配列で、しん、と白く無機質に笑っている
それでいてその眼窩で黒く黒く深く悲しんでいる
ひどく白くてひどく黒いあなたに、わたしはつられ
しん、と泣き笑う


ああ、死ぬ
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