パチパチ/瀬崎 虎彦
パチパチと散る
砕け散る
線香花火
それよりも
音無く夜に
消えていく
無音の夜に
消えていく
悲しい人の
戯言と
可愛い人の
独り言
パチパチ空は
水溜り
水音高く
土穿つ
梅雨はとっくに
明けたとさ
明けたと聞いて
また来たさ
パチパチ二人
瞬きを
何度も強く
繰り返し
抱きしめあって
繰り返し
呪詛するように
キスをする
それでも二人
いつの日か
別れるもまた
運命と
割り切るならば
その腕を
絡ませあって
夜の淵
パチパチ一人
白樺の
小枝を踏んで
歩きます
二人で行った
高原の
一人で帰る
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