循環/月焦狼
 
何も期待するな
自分を憐れむな

いじけるな


喪失は、いつも唐突である。
失うものは大きく、得るものは少ない。
時は突然私から大切なものを奪い去り、そのことに気づくことができたとしても、ただ呆然とする以外に術がない。
失わぬよう必死にしがみついたところで、気づきえぬ背後から時は忍び寄り、無情にむしり取ってゆく。
時の女神と幸運の女神の後ろ髪はとても短く、三日月兎のように足が速いといったのは誰だったのか。

サーカスは何処からともなくやってきて、どこへともなく消えてゆく。
旅の行商人はどれだけ長い間商売を営もうとも、どの村に所属することもできず永遠によそ者のままである。
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