白いポリ袋/
小川 葉
猫だとばかり思っていた
真夜中の道を歩く
白いものは
風に漂うポリ袋だった
と気づくまで
ほんとうは
猫だったのかもしれない
全ては過ぎてしまった
真実のように
広げても何もない
猫かもしれなかった
白いポリ袋が
風にあおられて
ふたたび僕の手を去る
駐車場に停められた
トラックの下に潜り込むと
生まれて間もない
子猫の声が
母さん
母さんと泣いている
しかしその声も
がさがさと
ポリ袋かもしれない
白いものが
擦れるだけの
音に聞こえる
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