日食に月を見よう/小池房枝
見えないものを見る機会は少ない
だから
日食を見よう
あれはつまり見えるはずのない昼間の月
太陽と同じような大きさのふりして
ときどき
青い空に白く浮かんでいたりするやつ
ほんとうは
地球から見て太陽の手前にあるんだよ
明け方の糸のように細い形から
月齢をリセットして
夕方の三日月にかわる狭間の新月
見えなくなっても月はそこにあることの
日食はその確かな証だ
いつもなら
受け止めるものも投げかける相手もなく
無為に宇宙空間に伸びている月という大きなボールの影を
今回は地球が受け止める
地球の
他のどの場所でもない君が/あなたがいる場所が
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