ぼくのなんかなんにもない/
ことこ
はんぶんの優しさをください
背中の割れた
脱け殻でもよいので
*
すいかの臍に
耳をあてれば
野菜であるという宿命を
粛々と背負う
胎動がきこえる
まだ生まれてもいないのに
*
母の足のうらの
魚の目が
いつも覗きこむ
あした
は
まばたきさえしない
*
とおくから聞こえる
ざわめきが
絡まりあいながら
水溜まりの底へと落下する
その過程で
ぼくは目覚めてゆくのだった
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