金魚の独りごち/Leaf
 
「玉揺の銅鎖樋から伝いし雨水と手水鉢(ちょうずばち)から伝いし雨水が溜まる水甕から零れた水琴窟の琴音、それは忘れられた嘗ての祭りで誰かさんが掬ったであろう金魚の独りごち」
琴の音色に
 歩みを止め
 涼みました
玉揺の鎖樋は
 銅色に輝き
 雨水を注いでました
手水鉢は今はもう
 使われ無くなって
 腐葉土にもなれなかった落葉とか
 媚り付いていました
雨水が垂れ流された先に
 仕様が無く置き去りにされた水甕の中には
 まさに祭りの名残の虚しさが
 真紅を薄めたような、
 朱色の金魚が一匹
 泳いでいました
まるで
 世界を
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