こんこんちきちん/あ。
恋人同士で祇園祭に行くと破局するんだって
昔からそんな噂がまことしやかに流れていた
きみからの誘いを断らなかったのは
おろしたての浴衣に袖を通したかった気持ち半分
別れたらそこまでの縁と割り切っていたのが半分
四条通は歩行者天国になり
普段車で埋まる道が大勢の人で埋まる
いつもの繁華街はなりをひそめ
なのにいつも以上の熱気と賑わい
普段と同じように大またで歩くと
浴衣はすぐに崩れてきてしまう
きちんと結んだ黄色い帯の裏側は汗がにじみ
扇子であおいだってちっとも涼しくならない
こんこんちきちんと鈴の音が聞こえる
見上げれば腰掛けて鈴を引く稚
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