夏群像/小川 葉
今年もまた
団扇の群れが
空を渡ってやってくる
地上では
とぼとぼと
室外機が歩いてる
生ぬるい息を漏らし
家々を訪ねてる
血のつながりや友情
愛よりも大切な
絆のために
室外機のないクーラーを
探してる
体から
生ぬるい息が漏れる限り
どこかで冷たい息をする
クーラーとまだ
繋がってるはずだから
必死に探す
夏のはじまりから
ずっと
見上げる空を
団扇の群れが去っていく
その日まで
夏が終わる
生ぬるい息も
じきにしなくなるだろう
もし生まれ変われるとしたら
団扇になりたい
同じ空を見上げてクーラーは
室外機と
同じ息を引き取った
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